ミシャカ日記

日本語の勉強、思考の整理、自己の発見

「断腸亭日乗」に見る夕方・日暮れ時の表現について(日記:4月15日~21日)

4月15日


朝、晴れ、7度。好晴続く。鶯声綿蛮たり。


換毛期のアモ子を毟った綿毛、小鳥の持ち去ること例年の如し。けだし巣作りに使うなり。
イッちゃん、荷造りして出立。アモ子つまらなそうな顔で見送りたり。家の中、静まり返る。


興に乗ってブログを開設す。4月1日からの日記を一日ずつ公開する予定なり。
昨日購いたる鯉のアラで味噌汁を作る。

 

静かやな鯉のあら煮を突付く音

 

日中気温20度。山猫柳咲きたり。鼻汁くしゃみ多し。


晡下、薄雲の彼方に日は黄昏れる。山上の西陽、冬頃とはだいぶその位置異なれり。
晩食後、見るべき映画もなければ荷風日記を読む。


イッちゃん二泊したれども、スーツケース抱きかかえて坂道登りしこと今日の午後の如し。楽しき時は夢の如し。
旧曲の直し。
夜10度。朧なる半輪の月。


4月16日


朝、曇りて6度。風やや冷やか。シジュウカラジョウビタキなど飛びまわれリ。近くに寄りて見れば、その小さき姿いと愛らし。
朝から鼻汁くしゃみ甚だし。靴の中敷きを洗う。
雲は次第に散りゆきたり。
アモ子ヒーターの前に陣取りて寝ること冬の如し。窓外にコゲラの木登り眺めつつ朝餉。


終日、陰晴定まらず。日中気温17度。
荷風日記読む。新曲着手せり。
夜8度、半月皎皎たり。乾燥した日続く。

 

剰語
他人の迷惑行為に対してそれを注意せず、それを撮影し、その動画を公開して自らの評価を高めむと欲する者多しと聞く。これを浅ましき行為と感ずる精神文化廃れつつあり。ジャーナリズムを騙る浅ましいメディアの影響なり。新聞雑誌の記者あるいは作家が、自らの行為が賤しく浅ましいものであるとの自覚失えば、これ即ちペンの暴力なり。


備忘録
昭和24年の荷風日記に次の記載あり。
農家の老婆に午後の留守番を頼み、一ヶ月の報酬1500円。
その家から白米を買うに当たり、一升230円。一升は1.5キロなり。
令和6年現在、白米10キロで3500円程度なりて、戦後の食糧不足による価格高騰の頃から2倍程度の値上がりに留まるなり。一方、毎日午後留守番を頼めば、現在においてその賃金は恐らく10万円は超えると思わるる。人権意識の高まりによりて人件費も高まりしことよく分かる一例なり。憲法を学びし頃、人権のインフレ化なる言葉ありしこと思い出したり。
現在の米国マクドナルドハンバーガーの時給が2500円を超えると聞く。それでも働き手来たらずとの話なり。


4月17日


朝、雨、気温7度。乾いた日が続きたりし故、ありがたき雨なり。花粉症状無し。
雨の中でも鶯声綿蛮。今春初の蛙声を聞く。峰は雲霧を纏て仙人でも居そうな気配なり。
午前のうちに雨晴れる。日中晴れて気温16度、水仙咲きたり。あんこ餅を食す。日曜日イッちゃん作り給いしアンコなり、有り難し。


作曲、作詞。「雨灑ぐ」という題にする。
映画「わるいやつら」を見る。夜7度、半月朧なり。フクロウの鳴くを聞く。
浴槽内にアリ数匹。何処から来たるや。浴室以外では姿を見ず。枕上「硝子戸の中」を読む。

 

4月18日


朝、薄晴れ、7度。囀り多し。
昨夜、風呂に入りし時、両の腿で毛の生え方が異なることに気づきたり。なにやら怪奇小説の出だしのようなる故ここに記す。
作曲続き。


日中、薄曇り、14度。夕暮れにかけて次第に曇る。


戦後の荷風日記にて、僕も知る「大いなる幻影」や「ファンタジア」などを荷風も見たとの記述あると、なんとも言えぬ感慨あり。
映画「疑惑」を見る。桃井かおりのオニクマ傑作なり。
夜8度、朧月。夜空明るし。枕上、夏目漱石「行人」。

 

備忘録
永井荷風断腸亭日乗」に見る夕方・日暮れ時の表現について
荷風は、晡下、昏暮、薄暮、黄昏といった表現を用いたり。意識的に使い分けている様子なく、また辞書を引いても各々同じような意味なれど、漢字の意味から推察するに以下のように細かく分けられるやもしれず。
晡下(ほか):晡時とは午後4時頃のこと、それより少し後の時間帯。単に時間を示す。
昏暮(こんぼ):暗く暮れていく。曇っていて特に暗い夕方を表す。
薄暮(はくぼ):薄く暮れていく。少し曇っているか、晴れているがそれほど明るくもない夕方を表す。
黄昏(たそがれ、こうこん):黄色く暗くなっていく。夕焼けを表す。

 


4月19日


朝、晴れて3度。花冷えなり。小鳥忙しなく飛び回りたり。


日記の推敲。音楽関係の雑務。
森鴎外伊沢蘭軒」を読む。


日中、好晴、14度。気温低けれど、日向暖か。時折突風吹く。トカゲの日向ぼっこの季節到来せり。
アモ散歩後、あんこ餅食す。


映画「砂の器」を見る。圧巻のクライマックスなり。
六度、月明皎皎、路に木陰を作りたり。

 

4月20日


朝、晴れ、6度。鶯声綿蛮たり。
頃日の寒さに午前中また炬燵に入りたり。
鴎外「伊沢蘭軒」を読む。


昼飯後、ベランダデッキチェアにて仮眠、日差し暖か。囀り多し。アモ子の毛を毟りたり。換毛甚だし。
日中晴れて20度。
鹿も換毛期なりて森の処々に鹿毛の塊落ちたり。丁字桜咲く。蝶の舞うを見る。けだしセセリチョウなり。
夜12度。円みを帯びた月朧なり。枕上、漱石「行人」読む。

 


4月21日 日曜日


朝、薄曇り、10度。鶯声綿蛮たり。カラマツの若葉柔らかなり。


鴎外「伊沢蘭軒」。僕の国語力及び江戸時代の知識乏しき故、半ば意味を解すること能わず。蘭軒の紀行文中に現れる『樹陰清涼大に佳なり』など僕でも解すことのできる言葉を見つけて処々味わうこと楽し。


昼飯後、午睡中窓外に雨声あり、暫くして止む。その後また霎雨あり。
午後、雨、12度。山桜咲きたり。日記推敲し、新しく学びし言葉用いけり。
映画「鬼畜」を見る。
夜、雨、10度。

 

剰語
子供の処世術は「いい子」でいることなり。