ミシャカ日記

日本語の勉強、思考の整理、自己の発見

永井荷風『断腸亭日乗』に見る音の表現(特に畳語)(日記4月22日~28日)

4月22日


昨日からの雨あがる。朝、曇、八度。猫柳落花狼藉たり。
新曲着手。掛布団カバー洗濯す。
午後、曇、13度。
夜、曇、10度。星月無し。蛙声あり。枕上、漱石「行人」を読む。

 

4月23日


朝、霧、9度。夜の中、雨降しようなり。鶯声綿蛮。蛙声を聞く。
霧の朝は蜘蛛の巣白く輝きて、その姿露わとなれり。
次第に濃霧、煙雨となりけり。
作曲続き、作詞。「霧の朝に」と仮題す。


午前中、霧晴れたところで敷地の階段修繕す。
午後、曇、12度。時折微雨。白木蓮と思しき花咲たり。辛夷やもしれず。
晡下、山は雲に蔽わるる。夜、曇、9度。
枕上、漱石「行人」を読む。

(花びら5枚は辛夷なり)

 

4月24日


朝、山は雲中にありて視界不良。小雨。7度。鶯声その他綿蛮なり。


アモちゃんご飯のお替り欲する時ボール持ち来たりて僕に渡したり。宛もお金のようなれど、このお金は主人からまた客人に返さねばならぬようなり。


昨日作りし歌の題名を「蜘蛛の糸」と変更す。
鴎外「伊沢蘭軒」を読む。漢詩ほぼ読むこと能わず。読み得る漢字から内容を想像するのみなり。
朝来雲中、視界悪し、日中雨、8度。鶯頻りに鳴く。苔類鮮やかなり。
夜、小雨、7度。枕上、漱石「行人」読む。


4月25日


朝、昨日山を蔽いし雲まさに雲散霧消しつつあり青空顔を見せたり。9度。囀り多し。

蜘蛛の糸」少し推敲。
午前のうちに快晴となる。小鳥の求愛活動盛んなり。二羽くっつきて飛ぶを見たり。

伊沢蘭軒」を読む。

日中、快晴、19度。山桜、連翹咲きたり。
去冬来、遊歩道沿いに落ちたりし手袋の片割れをまったく別の場所にて見つけたり。奇妙なり。
夜10度、涼し。東の空に円かな朧月。枕上、漱石「行人」を読む。

●ニュース記事より
JALの新社長、元スチュワーデスなり。


4月26日


朝、好晴、9度。心地よき朝なり。囀り多し。
鴎外「伊沢蘭軒」続き。漢詩は平仄、押韻など難しき規則あるようなり。僕は漢詩を漢語としてそのまま読むこと能わず故、その味わい愈解すること能わず。

日中、薄晴れ、20度。桃色の花咲きたり。ウグイスカグラなりや。タンポポ咲く。
久しぶりに温泉に入りたり。

夜12度。敷地内でフクロウとオナガらしき鳥鳴く。囂し。
枕上、漱石「行人」を読む。


4月27日


朝、曇、10度。囀り多し。鼻汁くしゃみの花粉症状。昨日の気候の故なりや。
日中、曇又雨。15度。
桜の木からぶんぶん音したりて見上げれば蜂か花虻か10匹ほど飛び回りて蜜を集めけり。
紫の花、一群にて咲きたり。タンポポより小さき草花、花びら5枚。葉は小舟型。蔓日々草なりや。
終日作曲。「眠らぬ森の美女」と題す。
夜11度、曇りて星月無し。枕上「行人」毎夜のごとし。


4月28日 日曜日


朝、好晴、9度。鶯声その他綿蛮たり。
散歩中、コルリぴょんぴょん飛び跳ねつつ道案内10メートルほど、いと美し。
日中、薄晴れ、23度。すみれ咲きたり。
最後に使いし時に一部破損せしアイゼンを漸く洗う。

作曲続き。一旦完成とする。旧曲の手直し。
夜15度。暖かなり。枕上「行人」。

 

備忘録
永井荷風断腸亭日乗』に見る音の表現(特に畳語)

殷殷(いんいん)・・・大きな音が鳴り響くさま。
囂囂(ごうごう)・・・口々にうるさく言いたてるさま。囂は、かしましい。
颯颯(さっさつ)・・・風が音を立てて吹くさま。
嫋嫋(じょうじょう)・・・風がそよそよと吹くさま。音声が細く長く、尾を引くように響くさま。
喞喞(しょくしょく)・・・虫のしきりに鳴くさま。
岑岑(しんしん)・・・頭などがズキズキ痛むさま。
淙淙(そうそう)・・・水の流れる音。さらさら。
簌簌(そくそく)・・・花の落ちる音。涙の落ちる音。ぽろぽろ、はらはら。
鼕鼕(とうとう)・・・太鼓の音が鳴り響くさま。
喨喨(りょうりょう)・・・音の明るく澄んで鳴り響くさま。